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【肥満学会2025レポート②】

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こんにちは、管理栄養士の千葉です。

 

今回のレポートテーマ:女性の低体重/低栄養症候群(FUS: Female Underweight/Undernutrition Syndrome)について

肥満学会2025レポートの第二弾として、女性の痩せについての提言を報告させていただきます。

 

「痩せ=美」への警鐘──女性の体型に関する新たな疾患概念「FUS」とは

2025年4月、日本肥満学会をはじめとする専門団体は、新たな疾患概念として「女性の低体重/低栄養症候群(FUS: Female Underweight/Undernutrition Syndrome)」を提起し、初の公式ステートメントを発表しました。

これは「肥満」を専門とする学会が、「痩せ」に焦点を当てた初めての動きであり、時代の変化を象徴する重要な一歩といえるでしょう。

 

 

FUSによる影響は?

FUSは、18歳以上~閉経前の成人女性を対象とし、「低体重または低栄養の状態を背景に、疾患や症状を合併している状態」と定義されています。具体的には以下のような症状が含まれます

  • 低栄養・体組成の異常:BMI<18.5kg/m²、筋肉量や筋力の低下、ビタミンDや鉄、亜鉛などの栄養素不足、鉄欠乏性貧血など。
  • 性ホルモンの異常:無月経や希発月経といった月経周期の乱れ。
  • 骨代謝の異常:骨粗鬆症や骨減少症による骨密度の低下。

これらは見過ごされがちな不調ですが、放置すると日常生活や将来の健康に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

背景にある「痩せ=美」という価値観

FUSの根底にあるのは、SNSやファッション誌などで拡散され続けている「痩せているほど美しい」という価値観です。こうした社会的圧力が、過度なダイエット志向や誤った美容法の選択につながっています。

2023年から2024年にかけて我が国で行われた調査では、なんと小学校1年生から痩せ願望が生じていたそうです。

中でも近年問題視されているのが、本来は糖尿病や肥満症の治療に使用されるGLP-1受容体作動薬の適応外使用、いわゆる「GLP-1ダイエット」です。本来の医療目的を逸脱した利用は、副作用や健康被害のリスクを高めるものであり、医療倫理上も大きな課題をはらんでいます。

 

必要なのは「正しい知識」と「多面的な支援」

ステートメントでは、FUS対策として以下のような取り組みが求められています

  • 過度な痩身志向を正すための教育的介入
  • 社会的・心理的・経済的な多面的な支援体制
  • 若年女性に向けた正しい情報発信と啓発活動

 

正しい情報発信と啓蒙活動を目的として、2024年3月にマイウェルボディ協議会が設立され、「医学的に適正な体型を自分の意志で選択できる社会へ」を目指した取り組みが始まっています。

 

この流れの中で、私たち医療者にも新たな役割が期待されています。要指導医薬品や処方薬の適正使用の支援はもちろんのこと、体型・栄養・生活習慣に関する啓発活動の担い手として、積極的に関わることが求められています。

特に、SNSや自由診療クリニックを利用する機会が多い若年層に対しては、医学的・倫理的な視点に立った丁寧な介入が重要です。

 

おわりに

「痩せていることが美しい」「細いほうが正しい」という価値観に、無意識のうちに縛られている人は少なくありません。しかし、心と体のバランスが取れた、自分らしい体型でいられることが本当の健康であると思われます。

今回のFUSステートメントは、現代女性が直面する新たな健康課題を社会全体で捉え直す、大切なきっかけになるはずです。

私たち一人ひとりが「正しい知識」を持ち、無理のない身体づくりを目指せるよう、支援の輪が広がっていくことを願っています。

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