
肺炎球菌とそのワクチンについて
肺炎は、高齢者や基礎疾患をお持ちの方にとって、決して軽視できない感染症です。
特に糖尿病のある方では、肺炎が重症化しやすく、入院や命に関わる状態につながることもあります。
今回は、肺炎球菌ワクチン(キャップバックス®、プレベナー20®、バクニュバンス®、ニューモバックス®NP)についてご説明いたします。
肺炎球菌とは?なぜワクチンが必要なのか
肺炎球菌は、私たちの鼻やのどに常在している細菌の一種です。
免疫力が低下したときに増殖し、肺炎、敗血症、髄膜炎などの重い感染症を引き起こします。
特に注意が必要なのが、侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)です。
これは肺炎球菌が血液や髄液など本来無菌である部位に侵入して起こる感染症で、敗血症や髄膜炎を引き起こし、命に関わることもあります。
肺炎は日本人の死亡原因の上位を占めており、成人肺炎の原因に中では肺炎球菌は重要で重症化の原因にもなります。
どんな方に接種をおすすめするか
特に以下のような方には、肺炎球菌ワクチンの接種をおすすめします。
• 65歳以上の方
• 糖尿病のある方(血糖コントロールに関わらず)
• 高血圧・脂質異常症などの生活習慣病がある方
• 慢性の心臓病・肺疾患のある方
• 喫煙歴のある方
• これまで肺炎球菌ワクチンを受けていない方
糖尿病の方は、肺炎や敗血症の重症化リスクが高く、予防の意義は非常に大きいと考えられています。
肺炎球菌ワクチンの種類
肺炎球菌には90種類以上の「血清型」があります。
ワクチンは「どの血清型をカバーしているか」「ワクチンの種類(結合型か多糖体か)」によって特徴が異なります。(現在、日本で主に使用されているワクチンは以下の4種類です。(2026年2月時点の情報です。自治体の定期接種や推奨は変更されることがあります)
① キャップバックス(PCV21)
• 成人に特化して開発された21価結合型ワクチン
• 成人で問題となっている血清型を広くカバー
• 免疫記憶が形成されやすく、長期的な効果が期待できる
• 原則1回接種
• ニューモバックス接種後の追加接種としても推奨されている
② プレベナー20(PCV20)
• 20価の結合型ワクチン
• 小児用プレベナーの技術を発展させた成人用ワクチン
• 免疫記憶が形成されやすい
• 原則1回接種
• 幅広い血清型をカバー
③ バクニュバンス(PCV15)
• 15価の結合型ワクチン
• 必要に応じてニューモバックスとの併用スケジュールが推奨される場合がある
• 結合型のため免疫記憶が期待できる
④ ニューモバックスNP(PPSV23)
• 23価の多糖体ワクチン
• 1988年から使用されている実績のあるワクチン
• 65歳の方を対象とした定期接種で使用
• 免疫記憶は形成されにくく、再接種が必要になることがある

厚生労働科学研究費補助金 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業「成人の侵襲性細菌感染症サーベイランスの強化のための研究」:2025~2027 年度(予定)https://ipd-information.com/adult/overview/(2025 年5月22日アクセス)より改変
結合型ワクチンと多糖体ワクチンの違い
■ 多糖体ワクチン(ニューモバックス)
• 多くの血清型をカバー
• 免疫記憶は形成されにくい
• 一定期間ごとの再接種が必要
■ 結合型ワクチン(キャップバックス、プレベナー20、バクニュバンス)
• 免疫応答が強い
• 免疫記憶が形成される
• 長期的な効果が期待できる
近年は、成人においては結合型ワクチンがより重要な選択肢とされています。
Pollard et al.(2009)より改変
すでにニューモバックスNPを受けた方へ
ニューモバックスNP(PPSV23)を接種済みでも、一定の間隔をあけて結合型ワクチン(PCV)を追加接種できる場合があります。接種歴や基礎疾患により最適な組み合わせ・間隔が異なるため、当院で確認します。
副反応
注射部位の痛み・腫れ・赤み、だるさ、頭痛、筋肉痛、微熱などがみられることがあります。多くは数日で軽快します。重いアレルギー反応はまれですが、気になる症状があればご相談ください。
さいごに
糖尿病治療では、血糖管理だけでなく、感染症を予防することも重要な治療の一部です。
肺炎は予防できる感染症のひとつです。
年齢や基礎疾患、これまでの接種歴によって最適なワクチンは異なります。
肺炎球菌ワクチン接種についてご不明な点がありましたら、どうぞお気軽に医師・スタッフまでご相談ください。




